特集 2001年 地域はどう変わる

2001/02/02

6. 住民自治

「地域スタンダード」を創造する

 経営感覚を市政運営に取り入れようと、行政サービスのコスト計算を住民に公開する一方、幹部職員の「トイレ掃除研修」を採用した大分県臼杵市。首都圏のコンビニの端末を通じて行政情報を発信する千葉県の市川市。エコマネー「クリン」で住民参加のまちづくりが進む北海道の栗山町。上流圏文化の見直しを進めながら草の根のネットワークを広げる長野県の早川町。ごみの完全分別を住民の「常識」とすることでリサイクル社会を実現しようとする三重県菰野町…。

■故郷の価値と可能性見直す

  本紙の最前線リポートなどで取り上げられた自治体の取り組みは、国の画一的な枠組みからはみ出した試みともいえます。視点を変えれば、横並び指向、ハコもの行政の限界を見極め、同時に、自分たちの住む地域の価値や可能性を見つめ直すところから再スタートしようという動きにほかなりません。

  「まちづくり基本条例」の制定や地域情報の積極的な提供によって住民参加の仕組みづくりを進めるニセコ町の取り組みは、その象徴的な動きの一つです。「自治を基本に自主性と自立性を持ち、個性豊かで活力に満ちた地域社会ニセコの実現をめざす」と条例に掲げられた町民の目標は、「ニセコ・スタンダード創造」の宣言ともいえるでしょう。

■地方の動きが流れを変える

  これらの動きが、特に地方の小規模な市町村に目立つのは、ハード重視の画一的な国の施策がもたらす負荷が都市部以上に深刻に現れているからです。また、小さなまちだからこそ、変革の舵を切りやすいという面も考えられます。

  恐らくこうした変革の波は、小さなまちから、地方のむらからさざ波のように広がっていくと思われます。地方税制など国レベルの課題についても、地方の波が政府を揺り動かす形で新しい一歩を踏み出すことが期待されます。

  この過程で重要な役割を発揮するのが、住民の高い参加意識と、市町村長のリーダーシップ、それに地方議会の政策論議、立法機能であることはいうまでもありません。

  (了)

 公共投資の事業別シェアの国際比較

 

 日本は、運輸、農林漁業、エネルギー関連といった経済サービスと地域開発のウエートが極端に高く、社会福祉、保健、文化関連の占める割合は極めて低い。ハードからソフトへのシフトと同時に、行政サービスに対する住民ニーズを公共投資に的確に反映させることが、大きな課題となっている。

 

| TOP | BACK |