特集 2002年 地域はどう変わる

1. 市町村合併 問われるビジョンと住民合意

2002/01/15
(オンラインプレス「NEXT212」64号掲載)

 

 市町村合併問題にどう対処するか。これが、まちの未来を推し量る「リトマス紙」となりそうです。

 法定の合併協議会の設置数は、合併特例法が改正された99年に5件16市町村だったのが、翌2000年は8件35市町村、2001年は15件54市町村に拡大、年明け早々に新たに5件13市町村が加わりました。任意協議会や合併研究組織に参加しているケースも加えると、ほぼ半数の市町村が「合併予備軍」となっています。

 ■「駆け込み」さらに加速

  合併に向けた動きが加速しているのは、財政支援を中心にしたさまざまな特例措置の期限が2005年3月に迫っていることが大きな背景となっています。合併手続きに2〜3年を要するため、少なくともこの春までには合併を議論するテーブルに着く必要があるからです。 

 昨年1月に西東京市となった田無・保谷両市の場合は、事務レベルの調査研究に約1年、任意協議会段階で約1年半、法定協議会設置から合併実現までさらに1年余を費やしました。これに対し、昨年11月の岩手県大船渡市と三陸町の合併は、両市町職員の合同検討会設置から合併までの所要期間はわずか7か月でした。

 タイムリミットが近付くに連れて、駆け込み的な動きが目立ち始める一方で、「合併しない宣言」をした福島県矢祭町や、住民発議を否決後あらためて町の生き残り策を住民同士の本音の論議で探ろうとする香川県財田町などの例も見られます。

  しかし、特例措置期限切れの2005年3月、統一地方選が行われる2004年4月をにらんで、2002年は合併論議が一層過熱すると予測されます。スケールメリットの追求の観点から、既存の市を核とした人口20万人以上の特例市や、近隣町村が連衡して4万人以上の市制移行を目指した合併が実現に向かうと見られます。

 ■損得勘定に落とし穴も

  問題は、借金財政を抱え、まちづくりの方向を明確に出来ないまま、苦し紛れの合併を目指そうとする動きです。「駆け込み寺」が、「お荷物」と見なされた自治体に対し門を閉ざす、という事態も予想され、門戸が開かれたとしても埋没していくまちが出てこないとは限りません。

  特例措置を受けての合併は、損得勘定からすると「得」な面が多くあり、規模拡大の効率性も大きなメリットですが、合併は目的ではなく、あくまでまちづくりのための一つの手段、選択肢に過ぎません。仮にその道を選択するにしても、この地域と住民の暮らしをどう形作っていくのか、明確な目標と住民の合意が不可欠です。 合併をめぐる論議を通じて求められているのは、まちの過去、現在をきちんと評価し、未来を正しく選択することです。

☆ ☆ ☆

 国、地方財政をめぐる危機の深刻化、都市と地方の対立、公共事業の見直し。地方にとって新世紀は、諸問題が一気に噴出する形で幕を開けました。身を屈めて、嵐が去るのを待つのか、風に身を任せるのか。それとも、逆風に立ち向かうのか。2002年。まちづくりに関わる者の真価が、あらためて問われる年となるでしょう。

 

 

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