行政評価システム事例検証・群馬県太田市(1)

2000/12/08

 

顧客指向とコスト感覚徹底

 太田市は、98年から行政評価の導入について検討作業を重ね、2000年度から評価システムを全庁規模でスタートさせました。住民満足度の向上に重点を置いた、成果主義に基づくマネジメントの推進を目的としています。こうした基本姿勢は「太田市経営憲章」という名称にも象徴されています。
  システム導入の目的は、住民満足度の向上とコスト意識の徹底による行財政体質の改善に置かれています。全体としては、民間の経営手法や経営的な感覚を、全庁的に根付かせようという狙いが色濃く出ています。 

 ■事業費、人件費を明示

 このため、「施策」段階の行政を評価対象としつつ、事務事業レベルの改善を当面の課題としているのが第1の特徴です。行政評価・行政経営の考え方をきちんと浸透させていく、という面からも、確実な一歩を踏み出そうとしていることがうかがえます。
  こうした考え方は、評価表にも表れています。評価表は、係長または課長補佐級の職員が作成者となり、施策の背景にある社会的な潮流と市民ニーズを抽出し、住民アンケートの結果と照らし合わせながら、施策の方向性を読み取ります。その上で、成果指標と目標数値を設定し、事務事業の改善策と予算規模を記述する方式になっています。
  評価表の作成を通じて、それぞれの担当課の現状を探り、課題を具体化していくシステムとなっているわけです。また、各評価表ごとに、その施策についてのコストと人件費が実績値として記入されており、事業のコスト把握や予算策定に便利な工夫も凝らされています。

 ■満足度を住民アンケート

 第2の特徴は、住民アンケートを現状把握の手段として活用していることです。アンケートは、システム導入に先立つ2000年1月に実施されました。市内在住の成人2679人を無作為抽出し、904件の回答を得ました。内容は、29の施策について、「満足度」と「重要度」を評価してもらう方式でした。
  基本的な行政サービスに対する住民意識が浮かび上がり、興味深い内容ですが、これらが必ずしも行政評価の評価指標とされているわけではありません。基本的な政策課題に対する住民の「受け止め方」をおおよそ把握する段階にとどまっており、住民の満足度を直接的に行政評価の指標として活用していくためには、それぞれの政策・施策についての情報提供と、調査テーマに応じた対象の絞り込みなどが課題となってくるでしょう。

 【太田市経営憲章(抄)】 

  1. 市民の目線から  
    ・市民は何を望んでいるか  
    ・市民は現状をどう評価しているか

  2. よりよい行政サ−ビスを目指す

  3. 常に成果を把握する

  4. 経営資源を有効活用する
    ・重点的な施策に対して、適正に経営資源を配分する
    ・費用的効果を最大化するための継続的改善の仕組みを作る

 

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