続・市町村合併を考える6-3

「合併NO」を宣言〜矢祭町の場合(3)

2001/12/03

 

 政策選択と住民合意形成に課題

 「合併ノー」を宣言した矢祭町は、それでは今後どうまちを切り盛りしていくのでしょうか。無論、地方自治の将来を楽観視して「タカ」を括っているのではなく、合併の道を選択すると同様に腹を括っての決断とも言えます。

 町の人口は7千人余り。米、野菜、畜産を中心とした基幹産業の農業は、粗生産額にして年間約19億円(98年)、特産のこんにゃくなどの食品加工なども比較的盛んです。しかし、ご多分に漏れない少子高齢化が急速に進み、町は高齢者福祉対策や、ニュータウン整備などによるUIターン・定住促進に力を注いでいます。

 99年度決算を見ると、歳入総額約49億2千万円のうち地方税収入は約5億8千万円に過ぎず、20億円以上の地方交付税を頼りにしています。交付税依存度は、県内町村の平均に比べても突出してます。また、財政基盤の脆弱さは0.22という財政力指数に顕著に表れています。

 こうした厳しい台所を抱えながら、町は国が70%を補てんする過疎債を活用して地域のインフラ整備に取り組んできました。特に、在宅介護やデイケア態勢を整えた高齢者福祉センター、軽費老人ホームや家族連れで楽しめるレジャー休養施設などは目を見張るものがあります。

 ■議会の機能も正念場に

 この結果、地方債現在高は約54億9千万円に達し、公債費比負担比率は33.4%(全国町村平均17.3%)と借金の荷がかさんできています。インフラ整備が一通り済んだこともあって、今後の歳出抑制に町は一定の見通しを得ていますが、これまで以上に行財政の効率化と政策選択が求められています。また、町は、借金体質の解消のためには、一定期間の事業凍結も辞さない構えを見せています。

 こうした流れの中で、交付税制度の見直しを含めた税源移譲を求めていますが、「合併によらない自律の道」を目指す以上、住民の合意形成と、その前提となる情報公開が町行政の大きな課題となってきます。また、政策選択を厳しく進める上では、首長のリーダーシップとともに、議員の政策能力と議会のチェック機能が問われ、住民意思の集約の場としての地方議会の本質があらためて問われることになります。

 

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