続々・市町村合併を考える2-2

注目自治体のその後(2)三重県・名張市の場合

2002/02/25

 

 財政格差背景に伊賀市構想に距離

 「忍者の里」として知られる三重県中西部の上野盆地を中心とした名張、上野市、伊賀、阿山、青山町、島ヶ原、大山田村の7市町村の首長が、合併による「伊賀市構想」に向けて動き出したのが、99年6月のことでした。特例法の措置期限内に三重県下第2の都市が誕生するかに見えましたが、その後、事態は大きく変化していきました。

 ■6市町村は任意合併協を設置

 7市町村の中で最多の約8万4千人の人口を抱える名張市が、この構想から一定の距離を置き、上野市など6市町村は2001年2月、「伊賀地区市町村合併問題協議会」を設立しました。各市町村から職員を派遣し、事務局9人体制で事務事業実態調査などの検討作業を始めるとともに、協議会便りやインターネットを通じて、住民に情報を発信しています。また、「合併出前講座」の取り組みも始まっています。

 伊賀地区は、国の合併重点支援地域とされ、特例法の期限内に合併が実現すると、国は合併後3年間にわたって特別交付税を交付することになります。新しいまちづくりに伴う施設整備や公共料金の格差是正、公債費負担の格差是正などにに活用できるもので、試算では、名張市を含めた7市町村の場合、総額約12億円ですが、名張市を除く6市町村では約8億5千万円が交付される見込みです。

 特例措置期限を前に「名張市構想」がなかなか具体化しない背景には、7市町村の財政力など「体力格差」や隣接市町村といっても生活圏に違いがあることなどがあるようです。名張市が、合併に慎重な姿勢を見せているのも、こうした事情があるからです。

 ■水道料金は3倍の開き

 財政力指数(99年)をみると、名張市の0.76に対して、上野市は0.66、島ヶ原村0.28、青山町0.37といったように、大きな格差があります。公共料金については、合併の際に平準化する道がありますが、水道料金をみると、6市町村の広域水道と名張市の給水原価は、約3倍もの開きがあります。

 2001年度からスタートした名張市の新総合計画では、合併よりも「自立」に力点が置かれ、市民懇談会などの場でも市長は「名張は自立可能」と説明を繰り返しています。しかし、その一方では、合併を一つの選択肢とする考え方もあり、合併の可能性を完全否定しているわけではありません。99年6月に7市町が同時に実施した住民アンケートでは、合併に期待する住民の割合は15%と最も低かった名張市ですが、住民に合併の機運が高まってくれば計画の見直しもあり得るとのスタンスを示してます。

 

| TOP | BACK | NEXT |